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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)323号 判決 1954年9月28日

主文

原判決を破棄し本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告理由(後記)第二点について。

自作農創設特別措置法三条一項一号により、農地所有者の居住する市町村の隣接市町村の区域内にある農地であつても地理的な関係等から居住市町村の区域内の農地に準ずべきものと客観的に認めらるべきものについては、農地委員会は、いわゆる準区域として指定承認すべき法律上の義務があり、この義務に反して買収することは違法であること、従つてかかる場合に市町村農地委員会又は都道府県農地委員会が同法施行令二条に定める手続をなさず、ために在村地主の所有地と認めらるべき農地を不在地主の農地として買収してしまうことは同法三条一項一号で準区域を規定した法律の精神に反すること、それ故、買収計画が立てられ又は買収処分が行われた場合にそれに対する訴において前記指定ないし承認がなされなかつた違法を主張することができるものと解すべきことについては、すでに当裁判所の判決の示したとおりである。(昭和二六年(オ)三号同二九年二月二五日第一小法廷判決参照)。

本件において原判決は「控訴人(上告人)は本件土地所在の成田部落は野崎村に在るが、矢板町に隣接し、自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第三条第一項、第一号により矢板町に準ずる地域として取扱れるべきものであると主張するが、このような土地は同法条により町村農地委員会が県農地委員会の承認を得て準区域として指定して始めてその取扱を受くべきものであるところ、成田部落についてこのような指定が未だ為されて居らないことは控訴人(上告人)の自ら認めて居るところであるからこの主張は採用出来ない」と判示して上告人の主張を排斥した。

しかしながら、たとえ町村農地委員会が準区域として指定しない場合でも、その地域が地理的その他の関係から客観的に準区域と認めらるべきときには、買収処分を争う争訟等の手続においても、その指定等のなされなかつたことの違法を主張し、買収処分等の取消を求め得ることは、前段に説明したとおりである。されば原審は、本件土地が自創法三条一項一号の準区域として指定されるべき客観的状況に在るかどうかを審判して買収処分の違法であるか否かを判示しなければならないのに、原判決はかかる判断を欠いている。

それ故原判決には審理不尽若しくは理由不備の違法があるから、この点の論旨は理由があり、その余の論旨を判断するまでもなく原判決は破棄されるべきものである。

よつて民訴四〇七条に従い、全裁判官の一致で主文のとおり判決する。(昭和二九年九月二八日最高裁判所第三小法廷)

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